人は死んではいけないと思う
端的に人はどうして死んではいけないのだろう。もっと正確に言うならどうして死んではいけないという感覚を持っているのだろう。私が死んでいないのはぶっちゃけ全部その感覚に支えられているからなのだが、どうして自分がその感覚を持っているのかはさっぱりわからない。なぜか人は皆死んではいけないと思っているし、自殺する人はみんなその越えてはいけない何かを越してしまったのだなと勝手に推測しているのである。
しかしなぜだろう
道理から考えて、頼んでもない好きで生まれたのでもないその生を終わらせたいと思う人がいるのは自然なことであるはずだ。蓋を開けたら、その人にとっては地獄だった。だから生を終わらせたいと思う、死にたいと思う。そういう人がいても不思議なことではないだろう。だが自分の勝手な思いではあるが、やはりそういう人も死んではいけないと思う。全ての生は生であるべきだという、ある意味で当然な理由によってなのかもしれない。少なくとも地獄であることが死ぬ理由にはならないと考えているのかな。生きていたくないと死にたいは同義に見えて、全然違うものである可能性もやはり残っているから。
存在を消すことと死ぬことは同じ意味なのか
しかし苦しい状況に生きているから生きていたくないというのではなく、端的に生きている、そのこと自体が苦しいというのもあり得るはずだ。周りの環境が悪いのでもなく、自分に満足がいかないのでもなく、ただただ存在しているというそのことが苦しくてたまらない。いわば、存在のその内容に苦しみを抱いているのではなく、存在するという形式のほうに苦しんでいるということは珍しいかもしれないがなくはないだろう。そういった人々が苦しみから解放される方法はもはや「存在を消す」しかない。だが「存在を消す」と「死ぬ」ことは果たして同じことなのだろうか。
生が当たり前だから死んではいけない
死ぬことはそういった未知を既知だと思い込んだ上での、一種の越権行為と言える。人は死を知らない、故に死んではいけない。それが私が今出せる一種の建前的な答えである。だが本音はなんというか、結局死んでほしくないとか死にたくないとかそういうものに着地するのだと思う。私は死にたくないし、私に死んでほしくない。だから、死んではいけないという感覚を持っている。自己防衛の意味で。そもそもなぜ死んではいけないのか、などと思うのは死に興味がありすぎるからなのかもしれない。普通は死んでいいかどうかなんてことは考えるまでもないのだろう。それだけ生きていることは当たり前で、だからこそ死んではいけない。それ以上の理由なんてないのかもしれない。
