底辺人間記録

底辺人間の行き場なき思考の肥溜め

書かなくて済むために書いている

1

文章など書かせないでほしい。こんな底辺のへっぽこに「自分にしか書けないものがある」なんて思わせる世の中には心底絶望を覚える。お前のような雑魚キャラが出る幕などあるわけないだろ、と私を怯えさせ萎縮させてくれる世の中なら、どんなによかっただろう。そしたら、私も雑魚キャラらしく分を弁え、慎ましく生きられたのに。自分が書かないよりかは書いた方が世の中のためになる、なんて烏滸がましく傲慢な自分のこの思いを、はっきり幻想だと打ち砕いてくれよ。ねぇ、世の中くん。




2

え、世の中のせいにするな、お前が勝手にそんな烏滸がましく傲慢な思いを抱いているだけだろって。いやー全くもってその通り。私が勝手に一人で抱いて燻って、挙句の果てに一人で消化不良を起こしているだけ。世の中くんは何も悪くない。悪いのは自分のことに関して、ちゃんと自覚する能さえない私。結局のところ私は自分を雑魚キャラだと認められない。自分のプライドがそれを許さない。だから自分だって世の中の役に立つんだと証明したい。そのために私の方が書くことをやめられないだけである。




3

世の中は私にそのチャンスをくれている。ほら、やってみろよって搔い潜ることのできる隙間を用意してくれている。なんとお優しいのだろう。おかげで私は人生のある限りその隙間を辿っていくことになるが、なんの隙間も潜れない一生よりは百倍ほどましだ。今のような世の中であることに私は深く感謝しなければならない。そうでなかったら、私はきっと今頃こんな風には生きていない。自分自身の無力さに打ちひしがれ、心の底から絶望していたに違いないのだから。




4

だが、私はやはり私なんかが文章を書かなくていい世の中になってもらいたい。そのためにこそ私は書いているのである。私は掻い潜れるその隙間をせっせと進む一方で、こんな隙間がなかったらよかったのにとも思い続けている。だって、そしたら端的にこんな隙間掻い潜らなくて済んだのに。私は自分自身の無力さに打ちひしがれ心の底から絶望をし、そして「普通に」生きられたはずだ。底辺のへっぽことしての、ただそれだけの人生に一喜一憂し、散々振り回され、いつの間にか幕を閉じている。目の前に隙間さえなければ、私の生き方はそんなであったはずなのだ。今の一生よりも百倍ほどましに思える。こんな傲慢で分不相応な思いを抱え続け、それをどうにかこうにか形にして、必死に消化しなければならない毎日なんかよりもね。そう思わないかな。世の中くん。